配偶者や親が亡くなると、その財産(遺産)を相続します。
プラスの財産だけを相続することはできず、借金などのマイナスの財産も一緒に相続しなくてはなりません。しかしマイナスの財産の方が多くても、家庭裁判所で相続放棄をとれば相続しません。
また、遺産は原則として、遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)が成立するまで、法定相続分(民法が定める目安)による相続人の共有です。
さらに、不動産は法務局、車は陸運局で、名義変更の手続が必要となります。また、金融機関の預貯金も手続をしなければ、下ろすことはできません。
相続税がかかる場合は申告も必要です。
相続手続の流れを、大まかに説明します。
1.遺言書の有無の確認
遺言書があるかどうかで、手続が大きく変わります。
公正証書遺言については、あるかどうか公証役場で確認ができます。
なお、自筆証書遺言・秘密証書遺言では、家庭裁判所で検認という手続が必要になります。
遺言書がある場合は(検認が必要なときは検認後)、その遺言書に基づいて5の手続をしてください。
ただし、遺言が遺留分を侵害する内容だった場合で、遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺を請求したときは、原則通りの手続です。
なお、遺留分減殺の請求権は、1年間の期間制限があります。場合によっては、内容証明郵便を出しておいた方がいいでしょう。
2.遺産の調査
後日改めて話し合う必要がないように、被相続人(相続の対象になっている、亡くなった方)の財産をすべて洗い出します。
具体的には、現金・預貯金、土地・建物、借地権・借家、保険金、車・オートバイ・船舶、美術品・骨董品、宝石、着物、電化製品、株式・社債、ゴルフ会員権などの債権、借金などの負債、すべての財産が相続財産です。 なお、お墓や仏壇は、相続財産には含まれません。
プラスの財産より借金などのマイナスの財産が多くても、家庭裁判所で相続放棄の手続をとれば相続しません。ただし、原則として亡くなってから3ヶ月以内にしなくてはなりません。マイナスの財産が多そうな場合は、急いで遺産の調査を行いましょう。
また、被相続人が消費者金融・クレジット会社などから長期間借入・返済を続けていたような場合、過払金(返し過ぎたお金のことで、取り戻せる)返還請求権を相続しているかもしれません。
3.相続人の確定
遺言書がなければ、相続人全員の話し合いで遺産の分け方を決めることになります。前提として、相続人を全員確定させましょう。
具体的には戸籍を集めて、戸籍から判断します。「未知の相続人」、というのも時々あります。
なお、認知症などで判断能力が低下した相続人がいると、その相続人は遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)に参加できません。協議を行うには、家庭裁判所で成年後見人等(後ろ盾となる代理人)を選任する必要があります。
また、行方不明の相続人がいるときは、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任します。さらに、相続人の中に未成年者がいる場合、相続人の組み合わせや遺産の分け方によっては、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要です。
4.遺産分割協議
相続人全員で遺産の分け方を話し合います。
遺産の全部ではなく一部についてだけの協議も、その一部についてだけ有効に成立します。
また、ある財産を一人が相続するという分け方だけでなく、複数の相続人で持ち合う分け方(共有)もあります。さらに、ある財産を一人が相続する代償として、他の相続人に対して現金を支払うという分け方もあります。なお、遺産分割協議が成立する前の遺産は、法定相続分という民法の定める目安で相続人の共有です。
協議が調ったら、「遺産分割協議書」を作成しましょう。不動産登記や金融機関の手続等に必要ですし、協議が成立した証拠として残しておきます。 法定相続分に従って相続することにした場合でも、証拠として、作成しておきましょう。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停(審判)を申し立て、裁判所が間に入って話し合いを続けることになります。
5.名義書換等の手続
不動産、車、預貯金などは、名義の変更をします。
借地・借家は、地主・大家さんに連絡をしてください。相続の場合、名義書換料・更新料等は不要です。
また、相続税がかかる場合は、申告をします。
なお、会社等の役員になっていた場合には、亡くなったという登記や、必要に応じて新任の役員の登記も必要です。
相続人・推定相続人(仮に今亡くなったとして、相続人になる人)は、誰でしょうか?
1.配偶者
夫からみた妻、または妻からみた夫のことを配偶者といいますが、被相続人(相続の対象になっている、亡くなった方)が亡くなったときに配偶者が存命だと、配偶者は相続人です。
配偶者は常に相続人です。これに対して、2以下は優劣の順位です。
なお、内縁関係では相続できませんが、遺言を書くことで財産などを遺せます。
2.子供・孫……
子供は相続人です。
お父さんが亡くなった時に、お母さんのお腹の中にいた赤ちゃんも相続人です。
被相続人より先に子供が亡くなっていても、その子供に子供(被相続人からみた孫)がいれば、その孫は相続人です。
養子も相続人です。「養子の子供」などは少し複雑なので、ここでは省略します。詳しくお知りになりたい場合は、ご連絡下さい。
なお、養子縁組をしても、実親との親族関係はなくなりません。
3.父母・祖父母……
子供や孫がいなければ、お父さん・お母さんが相続人になります。
お父さん・お母さんが二人とも亡くなられていても、おじいちゃん・おばあちゃんがご存命であれば、おじいちゃん・おばあちゃんが相続人になります。
4.兄弟姉妹、おい・めい
子供や孫がなく、お父さん・お母さんが亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人です。
兄弟姉妹が亡くなっていても、その兄弟姉妹に子供(被相続人からみたおい・めい)がいれば、そのおい・めいが相続人になります。
5.特別縁故者、国庫
上記に該当する親族がいない場合、相続人はいません。 全員、家庭裁判所で相続放棄した場合も、同様です。
もっとも、被相続人に特別に縁故のある人は、裁判所の手続によって財産を分与されます。相続人ではないので、時間と手間がかかりますし、確実ではありません。
このような人もいなければ、被相続人の財産は国庫に帰属します。
遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)が成立しないまま相続人が亡くなると、さらに相続が発生し、「相続権」が相続されます。
わかりやすく例えてみましょう。相続人が被相続人(相続の対象となっている、亡くなった人)の子供の場合で、遺産分割協議が成立しないまま、相続人(子供)が亡くなると、その子供の相続人(被相続人から見た、孫や婿・嫁)が被相続人の相続権を相続します。
ですから、被相続人が亡くなって何年も経つと、相続人が増えて、また遠い親戚が相続人になることもあります。つまり、遺産分割協議の参加者が増え、遺産分割協議の成立が難しくなってしまうのです。
被相続人が亡くなられてから何年も経っているような場合には、専門家にご相談された方がよいでしょう。
自筆証書遺言・秘密証書遺言では、遺言を遺した人が亡くなった後、家庭裁判所で検認という手続を受けなければなりません。
遺言書の検認とは、遺言があることを相続人に知らせるとともに、内容を確認して変造・偽造を防止する手続です。
遺言書に封がされている場合は、この検認手続で開封します。一刻も早く中身を確認したくなりますが、開けないでください。5万円以下の過料(罰金)に処せられるおそれがあります。
なお、この検認手続では、遺言の有効・無効や、法的効果の有効・無効は判断しません。
当事務所でも申立書の作成や提出する戸籍の収集のお手伝いをしておりますが、それほど複雑な手続ではありません。裁判所のホームページもご覧下さい。申立書の記載例もあります。
遺言執行者(遺言の内容を実現する人)が指定されていない場合には、同時に、遺言執行者の選任を行うことも多いです。
遺言書が2つ以上ありその内容が抵触する(相反する)場合、内容が抵触する部分については、遺言書の日付を基準に、もっとも後に作られた遺言の内容が優先されます。
内容が抵触しない部分については、前に作られた遺言の内容も有効です。公正証書遺言だから優先される、そういうことはありません。
このように日付の先後と内容を基準に判断します。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するため手続を執り行う人のことです。
遺言執行者がいると、手続が円滑になります。また、遺言に反して相続人が勝手に財産を処分したりするのを防止できます。
遺言に指定があればその人がなり、遺言に指定がなくても家庭裁判所が選任してくれます。
当事務所でも申立書の作成や提出する戸籍の収集のお手伝いをしておりますが、それほど複雑な手続ではありません。裁判所のホームページもご覧下さい。
自筆証書遺言・秘密証書遺言であれば、遺言書の検認も必要です。
財産を相続する場合、プラスの財産だけを相続することはできず、借金などマイナスの財産(借金等の負債)も一緒に相続しなくてはなりません。ただマイナスの財産の方が多くても、家庭裁判所で相続放棄の手続をとれば相続人にはなりません。
もっとも、マイナスの財産が多くても相続放棄をするかしないかは自由ですし、プラスの財産が多くても相続放棄をしても構いません。
相続放棄をすると初めから相続人ではなかったものとして扱われるので、他の親族が相続人になることがあります。相続放棄の原因がマイナスの財産の場合には、相続人になったその親族も相続放棄をされた方がよいでしょう。
なお、相続放棄をするには原則として、3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。
3か月というのは短期間であるため、プラスの財産が多いかマイナスの財産が多いかわからない場合向けに、限定承認という手続も用意されています。しかし、手続と税金の問題からあまり利用されていません。
ですから、わからない場合はひとまず、この3か月という期間を伸長する、熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申立てるといいでしょう。
当事務所でも申述書の作成や提出する戸籍の収集のお手伝いをしておりますが、それほど複雑な手続ではありません。裁判所のホームページもご覧下さい。
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